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CHAPTER 7

もし政府が悪用しようとしたら

FMPSに対する最も強い反論は、これです。「規則は変えられるが、インフラは残る」。将来、権威主義的な政権が成立すれば、ルールを書き換え、街路灯の網を市民の弾圧に使えるのではないか。

この反論は、真剣に受け止めるべきです

ばらばらに散らばった監視なら、一斉に掌握するのは困難です。しかし、統合された網は掌握しやすい。この懸念には十分な根拠があります。FMPSを推進する以上、この問いに答える責任があります。

私たちの答えは、「規則」だけでなく「構造」で守ることです。ルールを書き換えても、悪用が技術的に困難であり、かつ隠せないようにします。

構造による歯止め(検討中の設計)

1. 端末そのものに制約を持たせる

FMPSの端末は、映像を常時送らない設計です。通信の帯域を小さく抑え、一度に取り出せる量に上限を設ければ、仮にルールが書き換えられても、街全体の映像を一斉に吸い上げることは物理的にできません。大規模な監視には、端末の交換という、隠しようのない大工事が必要になります。

2. 鍵と記録を分散させる

暗号鍵の管理を自治体単位で行い、全国を一元的に管理しないことで、中央からの一斉掌握を困難にします。さらに、記録者や監査の機能を、政府の外にある複数の独立した機関に分散させることも考えられます。

3. ルールの変更そのものを記録し、公開する

ルールの変更も、VRAIOによって改ざん困難な形で記録し、公開します。ルールを変えること自体は民主的な手続きとして可能ですが、こっそり変えることはできないようにします。

4. 停止の仕組み

あらかじめ定めた条件のもとで、システムを停止できるようにします。実証実験の段階から、停止基準を設けます。

悪用は、どう見えるか:デモ

悪用の危険は、抽象論ではありません。桐生市の実証実験システムで、悪用の場面をあえて再現したデモがあります。市役所職員が、市役所で見かけた女性を気にかけ、駐車場から自宅までカメラを切り替えながら追いかける、という想定です。

カメラが8台しかない実験サイトでも、女性の行き先をたどれてしまいます。市内全域に同じ密度でカメラがあれば、どこまでも追えます。一方で、この職員の閲覧申請、閲覧したカメラと時刻は、記録サーバによってすべて一般公開されます。閲覧理由と違う目的で使えば、必ず見つかります。

デモ3:市役所職員によるストーキング(PDF)

FMPS+VRAIOが目指すのは、この「隠せない」状態を、街全体の規模で、しかも記録者・監査・制裁まで含めた制度として実現することです。

現状との比較

完全な保証は、どのような仕組みにもありません。しかし比べるべきは、FMPS+VRAIOと「監視のない社会」ではなく、FMPS+VRAIOと「統治されない監視が広がり続ける現状」です(3章)。民間の記録が誰にも検証されないまま蓄積していく現状と、取り出しのすべてが記録され、構造的な歯止めを持つインフラと、どちらが悪用に強いでしょうか。

この章の内容は、研究として詰めている最中の課題です。科学研究費助成事業「AGI時代における民主主義防衛のための倫理原則再構築と社会技術インフラ整備」(挑戦的研究(萌芽)26K21972)の中で、VRAIOが民主主義を守る道具であると同時に、民主主義が揺らいだときにも悪用されにくい道具であるための条件を検討しています。


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FMPS+VRAIO:街路灯による公共安全インフラとAI出力の統治 | 藤井雄作(群馬大学)・NPO法人 e自警ネットワーク研究会
本サイトの内容は研究段階の構想であり、数値は試算です。