e自警ネットカメラ製品化に向けた共同研究先の募集

e自警ネットカメラ」を活用した安全・安心な街作りを目指して

〜 閲覧行為の完全な記録による悪用防止 〜

 

【概要】

e自警ネットカメラ」は,「世界を大きく変える社会基盤」として,世界標準を獲得するポテンシャルを有していると考えています.

現時点で,「e自警ネットカメラ」を製品化する上で,技術的な大きな障害はなくなっています.

家電メーカ(ネットワークカメラメーカ),通信事業者(インターネット接続事業者)との共同開発を目指しています.

 

【将来展望・ビジョン】

近未来,@カメラの低価格化,および,A絶大な効果,により,通学路を含むあらゆる公共スペースが,ネットワークカメラにより死角なしに見守られるようになる,と予想している.その時,B悪用による危険性,が大きいことが,大きな問題になる.そのため,C悪用防止・プライバシー保護,が不可欠な要素になると予想している.

 

ネットワークカメラによる見守り_悪用防止対策なし

図1.全ての街路灯にカメラが内蔵され,インターネット接続された社会基盤が実現した近未来における,芋づる式追跡のイメージ図

 

以下,4つのポイントについて,説明する.

 

@   カメラの低価格化:ネットワークカメラを街路灯並みに高密度設置することは,技術的にも,コスト的にも,現実味があること.

例えば,LED街路灯(市価5,000円)と安いカメラ付き携帯電話(海外モデル.市価5,000円)を単純に組み合わせるだけで,ネットワークカメラ内蔵LED街路灯を作ることができる.

ネットワークカメラとLED街路灯を一体化することで,設置工事コストを低減することができる.

画像は各カメラに保存され,必要な時にのみインターネット経由で転送されることにより,通信量を大幅に低減できる.

大部分のカメラは,犯罪発生率が小さな住宅街などに設置され,録画画像ファイルが,捜査に使われることはほとんどない.そのため,全ての録画画像をインターネット経由でクラウドなどに転送することは無駄が多い.各カメラが,過去1か月分程度の録画画像をメモリーに保持している方式が経済的である.

IoTInternet of Things)の普及により,インターネット接続料金は,格段に低価格化する.こうしたネットワークカメラシステム(=通常時は通信がほとんど発生せず,事件・事故があった場合の芋ずる式の追尾においてのみ,各カメラからの画像ファイルが順次転送される,という使い方をされるシステム)に適した通信ネットワークの仕様・料金設定が望まれる.

 

A   絶大な効果:あらゆるヒト・クルマが追跡可能になること.強力な社会基盤になること.

芋づる式の追跡により,あらゆるヒト・クルマの(過去に遡っての)追跡が可能になる.(図1)

→「容疑者の確実な追跡・逮捕」,「誘拐された子供の追跡・救出」,「徘徊老人の追跡・保護」が可能になる.

屋外を逃走する容疑者・容疑車両については,100%に近い検挙率を達成できる.

自動追尾,異常行動(ケンカ,転倒,落書き,ポイ捨て)の自動検知・警告・通報,なども,可能である.

一度の犯罪による確実に追跡・逮捕される社会においては,痴漢の常習犯,空き巣のプロなどは,存在し得ない.

しかし,現時点で,このことに気付いている人は,殆ど存在しないようである.例えば,「ネットワークカメラが街路灯並みの密度で設置」について検索しても,私達の研究グループに関する情報しかヒットしない.

 

B   悪用による危険性:第3者による録画画像の窃盗などの悪用に加え,閲覧権を有する者(市役者や警察署の担当者など)の悪用,それによる一般市民のプライバシー侵害,など,大きな危険性も生まれること.

 極めて強力な追尾ができるので,悪用された場合の危険性も極めて大きい

→ 例えば,システムにアクセスする権限を持つ市役所職員・警察署職員が,業務以外の目的で,任意のヒト,クルマの足取りを(過去に遡って)追跡できることは,潜在的に大きな問題になる.

 

C  悪用防止・プライバシー保護: [A] 第3者による悪用,[B]アクセス権者による悪用,の両面から,悪用の防止,プライバシー保護,を徹底させる必要があること.

悪用によるライバシー侵害の危険性を除去する事が,この「世界を変える近未来の社会基盤」が社会に受け入れられる上で不可欠である.

[A] 第3者による悪用の防止:第3者による,録画画像ファイルの窃盗を防止する対策は不可欠である.

[B]アクセス権者による悪用の防止:アクセス権を有する担当者は,端末操作で,任意のヒト,クルマの足取りを(過去に遡って)追跡できる.悪用に対して,強力な防止対策を講じることは不可欠である.

上記の[A][B]を実現できるシステムとして,後述の「e自警ネットカメラ」(閲覧行為の完全な記録を実現できるネットワークカメラシステム)を提案している.

 

 

e自警ネットカメラ】

【1】e自警ネットカメラのシステムの概要

e自警ネットカメラは,全国津々浦々に街路灯並みに高密度・大量設置するのに適したネットワークカメラシステムとして,開発された.近未来,@カメラの低価格化,および,A絶大な効果(=容疑者の完全な追尾が可能であること),により,通学路を含むあらゆる公共スペースが,ネットワークカメラにより死角なしに見守られるようになる,と予想している.その時,B悪用による危険性,が大きいことが,大きな問題になる.そのため,C悪用防止・プライバシー保護,が不可欠となる.以下に示すように,[A] 第3者による悪用,[B]アクセス権者による悪用,の両面から,悪用の防止,プライバシー保護の徹底を図ることを目的として,e自警ネットカメラは開発された.

 

[A] 第3者による悪用の防止対策 (特許第5840804)

 

撮影された画像は,2つのキー(Key-AKey-B)で暗号化された上で保存される.閲覧装置に,Key Aのみを入力した場合にはモザイクがかかった画像が,Key AKey Bの両方を入力した場合は鮮明な画像が,それぞれ,閲覧できる(図2).

 

例えば,以下のような運用方法を想定している.

[1] 市役所が,2つのキー(Key-AKey-B)を設定.

[2] 市役所は,閲覧装置に, Key AKey Bの両方を入力することにより,鮮明な画像を閲覧できる.

[3] 市役所は,メンテナンス業者に,Key-Aのみを開示する.メンテナンス業者は,閲覧装置に,Key Aを入力することにより,モザイクがかかった不鮮明な画像を閲覧でき,これにより,動作チェックを行うことができる.

[4] 仮に第3者が,暗号化され画像ファイルを盗んだとしても,Key AKey Bを入力しない限り,画像の閲覧は不可能である.

 

e自警カメラ(2重暗号化)JP

図2.2つの暗号キーによる閲覧権の制御

 

以上により,第3者(不正取得者)による悪用の防止対策を高いレベルで実現できる.

また,複数の暗号キーにより,閲覧する権限を有する者の間において,閲覧画像の鮮明度を段階的に設定することができ,プライバシー保護を高いレベルで実現することが可能になる

 

「複数の暗号キーによる閲覧画像の鮮明度の設定(特許第5840804)」は,今回試作した「e自警ネットカメラ」の他,既に商品化されているネットワーク接続機能を有しないタイプの「e自警カメラ」に導入されている.

 

群馬県太田市での社会実験「e自警カメラを活用した,通学路の安全・安心の向上に関する取り組み」:

http://www.e-jikei.org/site/exp_Ohta_NishiHoncho.htm

 

 

[B]アクセス権者による悪用の防止対策(特願2015-167298

アクセス権を有する担当者(市役所の担当者など)は,端末操作で,任意のヒト,クルマの足取りを(過去に遡って)追跡できる.悪用に対して,強力な防止対策を講じることは不可欠である.アクセス権を有する担当者による悪用を防止する対策として,新しいコンセプト「閲覧行為の完全な記録」が提案された.本提案に基づくカメラシステム(e自警ネットカメラ)においては,

 

例えば,以下のような運用が行われる.

[1] 市役所の担当部署が市街地に設置・運用する膨大なカメラから,インターネット経由で画像を取得・閲覧する際に,市役所の担当部署ではない,信頼できる第三者により管理・運用される記録サーバからの許可が必要になる.

[2] 記録サーバは,「どの閲覧者に,どの画像を,どの不鮮明度での閲覧を許可したか」を,確実に記録する.

[3] これにより,その記録した情報を,その場で,あるいは,後日,業務命令と照合することにより,業務命令以外の不正な悪用を確実に検出することが可能となる.

[4] こうして,悪用は確実に発覚することになり,「業務と関係がない閲覧行為」は,強力に抑制されることになる.

[5] なお,第3者機関による運営される記録サーバは,画像ファイル,暗号キーに触れることは無く,純粋に,予め定められた規則通りに,許可コードを発行し,その過程を記録し,情報公開することに徹することになる.

 

図2に,閲覧行為の記録の仕組み(カメラ=閲覧装置=記録サーバ間のデータのやり取り)を図示する.実証実験においては,記録サーバは,記録した閲覧履歴を,ウェブサイト上に一般公開している.

 

関連特許:特許第4314369号,特許第5162732号,特許第5481632号,特許第5757048

 

実証実験サイトに関する情報開示をするサイト:http://www.e-jikei.org/site/exp.htm

 

Concept_記録サーバ

図2.閲覧行動の記録の仕組み:カメラ=閲覧装置=記録サーバ間のデータのやり取り

 

 

【2】e自警ネットカメラの試作機

e自警ネットカメラの試作機は,@カメラユニット,A閲覧装置,B記録サーバから構成される.図3に,試作システムにおけるカメラ=閲覧装置=記録サーバ間のデータのやり取りを示す.

 

図3.閲覧行動の記録の仕組み:カメラ=閲覧装置=記録サーバ間のデータのやり取り

 

2.1】カメラユニット

図5に試作したe自警ネットカメラ(ネットワーク対応型e自警カメラ)の外観と内部を示す.表1に,カメラユニットの機能・仕様を示す.

e自警ネットカメラ

図5 カメラユニット(試作機)の外観と内部

 

表1.カメラユニットの機能・仕様

電源

AC100 V

ACアダプタ

DC5V±5 %3.0 A,極性:センタープラス

カメラケースの仕様

形状:防滴型,材質:アルミニウム・ABS,質量:700 (g)

寸法(W×H×D)

142×115×280 (mm)

カメラの仕様

最大解像度:1920×1080,カメラ視野角:120 °

最大消費電力

12.5 (W)

Wi-Fi(無線LAN

2.4GHz帯のIEEE 802.11 b/g/n1x1:1)に対応

画像の保存場所

カメラ内のメモリカード(128GB)に保存.

保存画像の形式

撮影画像は,数字8桁の暗号キー(Key-AKey-B)により,暗号化の上,保存.

保存画像の消去

保存画像は,保存媒体の容量の範囲で,古い画像から順に,上書き消去.

保存画像の転送

画像転送は,「記録サーバ」から発行される「許可コード」に従い,転送.

 

2.2】閲覧装置

図6に閲覧装置(閲覧ソフト)の実行画面を示す.閲覧者は,[閲覧者ID][録画画像を閲覧したいカメラと録画時刻帯][閲覧理由]などを入力する.すると,閲覧装置は記録サーバと通信を行い,閲覧の可否の判断結果を受け取る.閲覧の許可が得られればカメラと通信し,画像を取得する.閲覧者はこの段階で暗号キーを入力して画像を閲覧する.暗号キーはKey AKey Bの2種類があり,Key Aのみを入力した場合にはモザイクがかかった画像が,Key AKey Bの両方を入力した場合は鮮明な画像が,それぞれ,閲覧できる.

 画像閲覧において,カメラの選択・切り替えは,実行画面の左上に示される地図上に表示されたカメラアイコンを,マウスでクリックすること行う.カメラ切り替え後は,切り替え前のカメラで,最後に閲覧していた画像の録画時刻より数秒前に録画された画像から,表示を始める.これにより,カメラを切り替えながら,ターゲットを「芋ずる式に追尾」することが,容易に,効率的に行える.

 

徘徊(36)

図6. 閲覧装置の実行画面(例):画面右上の地図上で,矢印(青)は選択可能なカメラを,矢印(赤)が現在選択されているカメラを,それぞれ,表す.画面右側は,選択中のカメラで録画された画像である.

 

現時点では,カメラ切り替え,対象(容疑者など)の追尾は,閲覧装置(閲覧ソフト)を手動で操作して行う方式になっている.将来的には,ソフトウェアによる自動追尾,異常行動(ケンカ,転倒,落書き,ポイ捨て)の自動検知・警告・通報,などを導入していく計画である.

 

2.3】記録サーバ

記録サーバは埼玉大学にあるコンピュータを使用している.閲覧装置を介して,閲覧者からの画像閲覧要求が来ると,その要求が正当なものであることを検証したのち閲覧許可を出し,同時にその事象を記録する.実証実験においては,閲覧記録はインターネットを介して,ウェブサイト上に一般公開する.一般市民は,が図7に示すような画面として,閲覧行為の全てを知ることができる.

 

server-record

図7.閲覧記録の情報公開サイトの画面(例)

 

閲覧記録の情報公開サイト:

http://www.fmx.ics.saitama-u.ac.jp/e-jikei/print.cgi

 

 

【3】e自警ネットカメラのシステムの将来展望

e自警ネットカメラは,試作機のような@カメラ単体のタイプの他にも,ALED街路灯内蔵型,BTVドアホン内蔵型,C車載型,Dウェアラブル型,など,様々なバリエーションが考えられる.

 

@    カメラ単体のタイプについては,ネットワーク接続機能を持たないe自警カメラを用いた社会実験を実施中である.

 

群馬県太田市での社会実験「e自警カメラを活用した,通学路の安全・安心の向上に関する取り組み」:

http://www.e-jikei.org/site/exp_Ohta_NishiHoncho.htm

 

群馬県みどり市での社会実験「駅周辺への自治体主導でのe自警カメラ導入実験」:

http://www.e-jikei.org/site/exp_MidoriCity.htm

 

ALED街路灯内蔵型については,自治体が,既存のLED街路灯を更新するタイミングで導入することにより,設置費用を低減できる.すでに製品化しているe自警灯(株式会社トステック製)に,e自警ネットカメラを持たせることは容易であると考えられる.

 

BTVドアホン内蔵型については,一般家庭の協力の下,既存のドアホンと交換することにより,導入コスト,運用コストを最低限に抑えることが可能である.ホームオートメーションの一部として,e自警ネットカメラの機能を追加することも容易である.

現在,ネットワーク接続機能を持たないe自警ドアホンを用いた社会実験を実施中である.

 

e 自警ドアホン(=プライバシー保護機能付き常時録画TVドアホン)を用いた社会実験:

http://www.e-jikei.org/site/exp_OwariAsahi_eJIKEI_DoorPhone.htm

例えば,愛知県尾張旭市で実施した社会実験においては,2262世帯中79世帯にe自警ドアホンを導入し,1年間社会実験を実施.犯罪認知件数66%減少を確認した.(平成26人に比べ,平成27年の年間犯罪発生件数が約1/3に激減!)

 

C車載型については,近年,多くの自動車には,カメラ,GPSが装着されている.さらに,IoTの普及により,インターネット接続も,標準的に実現されると予想する.その場合,車載カメラに,e自警ネットカメラの機能を持たせることは,容易であると考える.例えば,多くの自動車にe自警ネットカメラの機能を持つことになれば,街路灯内蔵型e自警カメラと合わせ,より死角のない見守りの実現が期待できる.

 

Dウェアラブル型については,スマートフォンのGPS機能,インターネット接続機能を利用して,容易に実現できると予想する.

 

 

【参考資料】

解説「通学路を死角なく見守る 防犯カメラシステムの実現に向けて」

http://www.e-jikei.org/site/On_eJIKEI_temp01.pdf

 

「通学路への防犯カメラ導入に関するアンケート調査」集計結果

http://www.e-jikei.org/survey/Results_Survey_All_944_out_of_1788.pdf

 

SCIENCE誌にeLetterとして,論文が掲載されました!
[1] Yusaku Fujii and Noriaki Yoshiura, "Will every streetlight have network cameras in the near future?", SCIENCE, eLetters (21 October 2016),

【連絡先】

本件にご興味をお持ちいただいた企業(家電メーカ,通信事業者,など)様は,お気軽に,下記まで,お問い合わせください.

研究グループの電子メールアドレス:exp@e-jikei.org

電話: 0277-30-1756 (群馬大学理工学部・藤井教授室)