駅周辺への自治体主導でのe自警カメラ導入実験
@ 群馬県 みどり市
〜 e自警カメラを活用した駅周辺での安全・安心の向上に関する取り組み
〜
【概要】
みどり市における地域社会の安全・安心の向上を目指して,8台の防犯カメラを市内主要駅に試行的に設置しています.この取り組みは,群馬大学理工学部藤井研究室,NPO法人e自警ネットワーク研究会が実施する社会実験を活用して行われています.本取り組みを通して,e自警カメラを活用して,地域住民・通行人のプライバシーを高いレベルで守りつつ,人の往来の多い駅周辺を24時間見守り,地域の安全・安心を飛躍的に高める.このことを,安価に,そして,手軽に実現できることを実証したモデルケースを作り,全国の地域社会の安全・安心の向上に貢献したいと願っています.
【e自警カメラについて】
「e自警カメラ」は,@プライバシー保護の徹底,A低コスト(低導入コスト,低運用コスト)の両立を目指して開発された暗号化保存機能が有るAll-in-one型の防犯カメラシステムです.特徴は,以下です.
[1] 低コスト: メモリーカード内蔵式のAll-in-one型なので,電源工事のみで,モニター室等への配線工事が不要です.これにより,工事コスト,運用コストを,小さくできます.
[2] 常時,最新の1週間分の画像がSDカードに上書き保存されます.
[3] プライバシー保護機能の強化:
画像は2つの暗証キーKey-A とKey-B により,暗号化されて保存されます.
Key-Aのみだと不鮮明処理(モザイク化処理)された画像のみ閲覧可能です.
Key-A と Key-Bの両方があれば,鮮明な画像が閲覧可能です.
メモリーカードを不正に取得した者(=暗証キーを持たない者)は画像の閲覧ができません.
図1.社会実験で使用するe自警カメラ
(マツダ商事製:eJKC-ZB102a)
【社会実験の概要】
社会実験においては,自治体手動による駅周辺の一般公共スペースへの防犯カメラの導入においてクリアすべき課題である,@プライバシー保護,A低コスト,を高いレベルで両立させたモデルケースを作り上げることを目指す.地域の安全のために,死角の無い見守りを実現し,かつ,徹底したプライバシー保護を実現することが可能である低コストな防犯カメラシステムを開発する試みは,世界的にも類例のない独創的なものである.社会実験の成果は,随時,プレス発表等を通じて全国に広報する.このe自警カメラを用いた駅周辺の見守りを全国・全世界に普及させ,安全・安心な街を全国・全世界に広めていくことを目指す.
【カメラの設置箇所】
赤城駅:5台,大間々駅:1台,岩宿駅:1台,阿左美駅:1台 計8台
図2 カメラ設置位置(赤城駅)
図3 カメラ設置位置(大間々駅)
図4 カメラ設置位置(岩宿駅)
図5 カメラ設置位置(阿左美駅)
【社会実験でのe自警カメラの運用形態】
図6 運用形態(2つの暗証キーKey-A とKey-Bを用いたプライバシー保護の手法)
今回の社会実験では,みどり市役所が2つの暗証キーKey-A とKey-Bを設定・管理をする.メンテナンス業者は,みどり市からKey-Aのみ教えてもらい,モザイク画像(不鮮明な画像)で動作チェックを行う.
みどり市役所: Key-A,Key-Bを両方を設定・所持する.鮮明な画像を閲覧可能.
メンテナンス業者:みどり市役者からKey-Aのみ教えてもらう.モザイク画像(不鮮明な画像)で動作チェックを行う.
みどり市による運用方法の詳細については,以下の,みどり市役所のウェブサイト上の説明資料をご参照ください.
「みどり市内主要駅における防犯カメラ運用要領(PDFファイル)」
http://www.city.midori.gunma.jp/www/contents/1424738712484/files/kamerayouryou.pdf
【アンケート調査】
現在,駅周辺でのアンケート調査を実施を計画しています.(2016年2月に実施予定)
l アンケート調査票(PDFファイル)←間もなく,UPします.
l アンケート調査の集計結果(PDFファイル)←集計・解析が完了次第,UPします.
【関連資料】
研究グループに関しては,下記のNPO e自警ネットワーク研究会のホームページをご参照ください.
群馬大学理工学部藤井研究室については,以下をご参照ください.
http://www.el.gunma-u.ac.jp/~fujii/
(英語版のページが開きますので,「日本語サイトへ」のボタンをクリックしてください.)
【研究グループの活動の狙い】
近年,日本では,子供の誘拐,強盗,空き巣,痴漢等,多くの犯罪が発生しています.これらの犯罪の多くが,閑静な住宅街,通学路,一般道路などで発生しているにも関わらず,目撃者が居ない場合が多く,問題となっています.
一方,繁華街,中心市街地などの犯罪多発地域,犯罪捜査の上で重要な場所等において,行政等による防犯カメラ(CCTVカメラ)の設置が全国的に進んできています.しかしながら,これら従来型のCCTVカメラシステムでは,集中管理に伴う高コスト,プライバシー侵害の危険性への懸念・不快感などから,住宅街,一般道路等,犯罪の起こる確率が低い地域・場所への高密度な導入は,望めない状況です.そのため,住宅街での事件で,目撃情報がないという事態が生じています.
ごく最近になり,児童の安全を守るために,東京都,群馬県太田市,群馬県高崎市などの自治体が,住宅街,小学校の通学路,などに防犯カメラを設置する計画を進めています.その際には,プライバシー保護の徹底,低コスト化が大きな検討課題となります.なお,東京都の計画(1300校に対して合計6500台)でも,一校あたり僅か5台という超低密度な設置に留まります.
このような状況の下,我々は,近年急速に普及した情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)を利他主義に基づいて市民が使うことにより,地域社会の安全性を向上させようとする考え方「e自警ネットワーク」を発案し,この考え方を普及させるために群馬大学理工学部内にNPO法人e自警ネットワーク研究会(http://www.e-jikei.org)を設立し,啓発・普及活動,研究開発に取り組んできています.e自警ネットワークは,次の2つの基本コンセプトより構成されます.
コンセプトA:科学技術を活用し,一般市民が,身の回りを確実に見守る社会の実現.
コンセプトB:暗号化保存等による,一般市民のプライバシーの確実な保護の実現.
「市民の協力により,市街地の隅々まで見守られる社会」を,広く普及した科学技術で実現しようというのが,e自警ネットワークの1番目のコンセプト(コンセプトA)です.また,プライバシー侵害の問題を解消する決め手として,画像を暗号化し保存することにより,画像の閲覧権のきめ細かな設定を可能にするというのが,2番目のコンセプト(コンセプトB)です.
また,行政による市街地の見守りを支援する目的で,行政が導入するのに適したカメラシステムとして,e自警カメラを提案し,パートナー企業が製品化しています.e自警カメラにおいては,撮影した画像は,暗号化してカメラ内に保存されます.暗号キーを適切に管理することにより,「予め,決められた人」だけが閲覧できる,運用形態をとることが可能になります.カメラ内に保存された「暗号化された画像ファイル」を取り出すには,人が,カメラのところまで行く必要があることにより,理由もなくカメラから画像を取り出すことが,非常にやりにくい状況が作られています.
しかしながら,カメラがネットワークに接続され,カメラ内に保存された「暗号化された画像ファイル」を,瞬時に取り出すことが可能になってくると,「予め,決められ,閲覧を許された人」による悪用の心配が出てきます.この問題を解決するために,今回,新しいコンセプトを提案し,それに基づく,新しいカメラシステム「e自警ネットカメラ」を開発しました.
我々は,「e自警ネットワーク」の普及を通して,「犯罪者が逃げられない社会」,「誘拐された子供が,救出される社会」を全国の地域社会で実現することを目指しています.
【連絡先】
群馬大学 大学院理工学府 教授 藤井雄作
群馬県桐生市天神町1-5-1 群馬大学理工学部3号館
電話:0277−30−1756(藤井教授室)
群馬大学 大学院理工学府 助教 田北啓洋
群馬県桐生市天神町1-5-1 群馬大学理工学部6号館
電話:0277−30−1748(藤井研究室)