社会実験サイトの公募

e自警ネットカメラ」を活用した安全・安心な街作りを目指して

〜 閲覧行為の完全な記録による悪用防止 〜

 

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【概要】

閲覧行為を完全に記録することにより,画像の悪用を防止する新しいネットワークカメラシステム「e自警ネットカメラ」を用いた社会実験サイトの公募を行います.世界初の「e自警ネットカメラを用いた社会実験」を,全国の4地区(4団体)で,同時に実施することを計画しています.

 

【目的】

提案するコンセプト「閲覧行為の完全な記録」(特願2015-167298)は,通学路を含むあらゆる公共スペースが,防犯カメラにより死角なしに見守られるようになる近未来において,一般市民のプライバシー保護の為の必須要件になると考えております.

本社会実験においては,「閲覧行為の完全な記録」を実現可能な新しいネットワークカメラシステム「e自警ネットカメラ」を住宅街などに実際に設置し,運用することを通して,提案するコンセプト「閲覧行為の完全な記録」の有効性を検証することを目的としております.

特に,今回の社会実験を通して,実施団体(自治体,町内会)の方々と共に,問題点の発見,および,その解決のための工夫をしていき,本コンセプトのモデルケースを作り上げていき,近未来の社会の在り方のお手本として,全国,全世界に示していきたいと考えております.

 

【公募条件】

@   公募する実施団体の種類:市町村,町内会など

A   公募する実施団体の数:4団体程度

B   e自警ネットカメラの提供台数:7-8台/団体×4団体=28-32

C   公募期間:2016912日(月)〜20161012日(水)

D   実施期間(暫定):2017110日(火)〜2018110日(水)(約1年間を予定)

 

E   研究グループが負担・実施するもの:

     e自警ネットカメラ(本体)の提供

     e自警ネットカメラシステム(記録サーバーを含む)のメンテナンス

() 研究グループは,個々の実施団体が定める暗唱コードを知らず,画像閲覧は不可能な状態を作ります.

     社会実験用の情報提供ウェブサイト(実験サイト毎に用意)を通じた情報提供

     電子メール等による打合せ,技術サポートなど

     アンケート調査用紙の作製,および,結果の集計・解析

     社会実験の成果の情報発信(新聞発表,論文発表,など)

     社会実験の成果に関する説明会,シンポジウム,国際会議等の開催

 

F   実施団体が負担・実施するもの:

     運用規定の作成

     住民説明会の開催

     カメラ設置場所の選定

     暗唱コードの設定・管理

     カメラの設置・運用・撤去

     研究グループからの要請に基づく回覧板等を使ったアンケート調査の実施(実験期間中1-2回程度)

() 社会実験期間終了後のカメラの取り扱いについては,研究グループに返却していただいても良いし,あるいは,自己責任でそのまま使っていただいても良い.

() カメラ設置場所としては,一般家庭のWi-Fi環境を使わせていただける場所に限ります.

 

e自警ネットカメラ】

近未来,IoT (Internet of Things,モノのインターネット) の普及に伴い,全国の市街地において,ネットワークカメラ,あるいは,街路灯内蔵型のネットワークカメラが,街路灯並みの数量・密度で設置され,それらが,インターネットに接続され,各カメラで撮影・保存される画像ファイルへの迅速なアクセスが可能になると予想される.日本全国において,不審者,容疑者,容疑者車両に対する,閲覧用端末の手動操作による追跡,あるいは,ソフトウェアによる自動追跡が,技術的にも,コスト的にも,容易に実現可能になると予想される.

 

 そうした「インターネット接続されたカメラが,街路灯並の密度で,いたるところに設置された近未来」の世界においては,例えば,子供が誘拐される事件が発生した場合,まず,家族からの通報を受けた警察の担当職員が閲覧用端末を操作し,子供の家の前(あるいは周辺)に設置されたカメラに記録された画像を調べる.子供が家を出ることが確認されたら,そこから,芋づる式に,カメラを順次切り替えながら,追跡していく.子供が車両に載せられた場合は,当該車両を,同様に,芋づる式に,追跡していき,現在位置を特定する.そして,パトロールカーを向かわせ,子供を救出する.ということが,簡単に,当たり前のように,出来るようになると予想される.1回の犯行で確実に追跡・逮捕されるので,痴漢の常習犯,プロの空き巣などは,存在し得なくなる.これは,「素晴らしい社会基盤」になり得ると考える.

 

 しかし,そうした社会において,画像にアクセスする権限のある人間,例えば,市街地カメラを管理・運用する市役所の担当職員が,私的な動機でシステムを悪用できてしまうなら,それは重大な問題となる.例えば,特定の女性・男性の行動を,閲覧用端末を操作して,カメラを切り替えつつ手動で追跡するストーカー行為,特定の個人の動きを自動追跡ソフトにより追跡・記録する行為,などが挙げられる.こうした不正使用が出来ないようにする仕組みが,不可欠になる.こうした危険性がそのままでは,折角の「素晴らしい社会基盤」が,社会に受け入れられることが難しくなると危惧する.

 

 それに対する答えの一つとして,新しいコンセプト「閲覧行為の完全な記録」が提案された.本提案に基づくカメラシステムにおいては,例えば,市役所の担当部署が市街地に設置・運用する膨大なカメラから,インターネット経由で画像を取得・閲覧する際に,市役所の担当部署ではない,信頼できる第三者により管理・運用される記録サーバからの許可が必要になる.記録サーバは,「どの閲覧者に,どの画像を,どの不鮮明度での閲覧を許可したか」を,確実に記録する.これにより,その記録した情報を,その場で,あるいは,後日,業務命令と照合することにより,業務命令以外の不正な悪用を確実に検出することが可能となる.こうして,全ての閲覧行為が完全に記録され,その場で,あるいは,後日,業務命令と照合されることにより,悪用は確実に発覚することになり,「業務と関係がない閲覧行為」は,強力に抑制されることになる.

 

本コンセプト「閲覧行為の完全な記録」を形にするために,e自警ネットカメラ(試作システム)を開発した.試作したカメラシステムは,小型コンピュータボード(Raspberry Pi 2)を内蔵したカメラユニット,閲覧装置(閲覧ソフトウェアをインストールしたPC),および,記録サーバ(埼玉大学内)から成る.現在,カメラユニット8台,閲覧装置数台,記録サーバ(埼玉大学内)から成るシステムを,実証実験サイト(群馬県桐生市末広町「末広みらいパーキング」敷地内)で試験中である.

社会実験・実証実験の説明サイト: http://www.e-jikei.org/site/exp_all.htm

 

1に,開発したe自警ネットカメラ(試作システム)のカメラユニットの外観を示す.

 

e自警ネットカメラ

1e自警ネットカメラ(試作システム)のカメラユニットの外観と内部

 

図4

2 閲覧行動の記録の仕組み:カメラ=閲覧装置=記録サーバ間のデータのやり取り

 

図2に,e自警ネットカメラにおける,閲覧行動の記録の仕組みを模式図で示す.

(1)         カメラで撮影され暗号化された画像ファイルを,入手,あるいは,開く際に,記録サーバから発行される許可コードが必要となる.

(2)         記録サーバは,許可コード発行要請に対して,予め定められた許可コード発行条件で,許可コードを発行する.

(3)         記録サーバは,許可コード発行要請の受付から,許可コード発行までの過程における,カメラID,画像ファイルID,閲覧者ID,許可コード発行時刻,発行した許可コード,などの情報を記録する.

 

上記の仕組みにより,閲覧者が閲覧装置を使って,各カメラに保存された画像ファイルを閲覧しようとする行為は,全て,記録サーバに記録されることになる.一方,記録サーバは,画像ファイル,暗号キーに触れることは無く,機械的に,予め定められた規則通りに,許可コードを発行し,その過程を記録することに徹することになる.

 

記録した閲覧記録の使い方としては,その場で,あるいは,事後において,業務命令に基づく閲覧行為であるかの照合に使うことが考えられるが,実証実験では,閲覧記録を全て,ウェブサイト上に一般公開することとした.一般に,防犯カメラの前を通る人は,「強制的に撮影」される.強制撮影とバランスを取る目的で,上記の実証実験においては,防犯カメラが撮影した映像を閲覧する人に対しては,「閲覧行為を,強制的に一般公開」するようにした.「強制的に,撮影される」ことに対して,「強制的に,閲覧行為が公開される」とすることでバランスを取るという考え方である.この考え方を拡張すると,例えば,自治体が運用する全ての防犯カメラの閲覧記録は,閲覧命令との整合性のチェックがなされるだけでなく,そのチェック過程も含め,全て,公開されるという運用方法も考えられる.これにより,一般市民は,運用者の悪用により,プライバシーが侵害されることに対する不安感を払拭できると考えられる.

 

提案するコンセプト「閲覧行為の完全な記録」は,ネットワークカメラ(e自警ネットカメラ,など)に限らず,インターネットに接続しないスタンドアローン型カメラ(e自警カメラ,e自警灯,e自警ドアホン,など)に対しても,適用することができる.

 

今回の社会実験では,実証実験と同様に,図3に示すように,閲覧記録を全て,ウェブサイト上に一般公開する予定である.

 

Concept_記録サーバ

3 今回の社会実験における「閲覧行動の完全な記録」と「記録の一般公開」

 

提案するコンセプト「閲覧行為の完全な記録」は,通学路を含むあらゆる公共スペースが,防犯カメラにより,死角なしに見守られるようになる近未来において,一般市民のプライバシー保護の為の必須要件になると考えている.今回の社会実験を通して,実施団体(自治体,町内会)の方々と共に,本コンセプトのモデルケースを作り上げていき,近未来の社会の在り方のお手本として,全世界に示していきたい.

 

【参考資料】

 

解説「通学路を死角なく見守る 防犯カメラシステムの実現に向けて」

http://www.e-jikei.org/site/On_eJIKEI_temp01.pdf

 

「通学路への防犯カメラ導入に関するアンケート調査」集計結果

http://www.e-jikei.org/survey/Results_Survey_All_944_out_of_1788.pdf

 

【連絡先】

本件にご興味をお持ちいただいた団体(自治体,町内会)様は,お気軽に,下記まで,お問い合わせください.

研究グループの電子メールアドレス:exp@e-jikei.org

電話: 0277-30-1756 (群馬大学理工学部・藤井教授室)