犯罪捜査支援用 画像復元技術
汚れたレンズを有する監視カメラで撮影された画像の復元技術
1. 概要
犯罪発生後,証拠画像を写した防犯カメラシステム(レンズ系,撮像素子(CCD),映像ケーブル,録画装置などから構成される)のノイズ発生機構を「測定」し,その逆変換を求めることにより,撮影された画像から,本来の鮮明な画像を再生する技術を開発する.
2. 意義
監視カメラシステムは,「いざ」というときに,レンズの汚れや,録画系(ビデオデッキとビデオテープ)の劣化により,非常に不鮮明な画像を記録しているということが,犯罪捜査においてしばしば問題になっている.監視カメラは,通常,数ヶ月,数年の単位でメンテナンスなしのまま放置されることが多く,この問題は,かなり普遍的な問題である.この問題を改善できれば,犯罪捜査に大きな貢献を成すことができ,ひいては,多くの人命救助にも役立つ,社会的意義の大きな研究テーマである.一方,営利的な観点からいうと,システム導入先は警察に限られ,直接的に大きく儲かる話ではないので,民間企業にとっては動機を持ちにくいテーマでもある.利益がなくても社会貢献のための科学技術を開発しようというテーマであり,大学,警察の共同研究にするにふさわしいテーマである.
3. 運用のイメージ
事件発生後,警察(の科学捜査部門)が,防犯カメラシステムのノイズ発生機構を,「専用測定機器」を用いて「測定」する.その際,その現場の状況にあわせて,様々な選択肢の中から,適当な画像復元技術を選択して使うというイメージ.逆に言うと,想定される様々な状況(レンズの汚れの種類(ヤニ,ホコリ,雨滴),ノイズの種類(ケーブル雑音,VTRヘッドの劣化,VTRテープの劣化),照明の問題の種類(逆光,蛍光灯劣化)など)に応じて,それらに適した対策があり,それらを,片端から開発し無償提供していくことを行えば,極めて大きな社会貢献になる.
4. 研究開発のアプローチ(試案の例示)
基本的な考え方として,以下が,通常の画像復元と異なる大きな特徴と思います.
(a) 当該人物(容疑者)以外の状況(レンズの汚れ,その他,背景の配置)など は,そのまま保存されており,自由に利用できる
(b) 画像復元のための手間は,必要ならば,どんなにかかってもかまわない.
この特徴を最大限に生かした復元方法を考えていくと,自ずと,特徴のある復元方法 が開発されてくるものと考えています.
防犯カメラシステムの「ノイズ源」としては下記がある.
(1) レンズ系(の汚れ)
(2) 撮像素子(の劣化)
(3) 映像ケーブル(への外部電磁ノイズの進入)
(4) 録画システム(ビデオデッキ&テープ)(の劣化)
(5) 外部照明状態(の変動)
(1)〜(5)は,さらに,
(A)時間的に変動しない成分
(B)時間的に変動する成分
に分けて考えることができる.
突き詰めて考えていけば,(1)〜(5)の(A)(B)それぞれについて,対策を打っていくことができると思われる.単純計算で課題だけで10通りあり,それぞれに,様々な視点からのアプローチが可能であると考えられる.